中国新聞 天風録 (2014年2月4日)
2014年2月1日 厳島神社にて、三代興哉 襲名式を執り行いました。
「宮島御砂焼」山根興哉、「宮島細工」小林松斎の二名が、それぞれの家業の三代目を襲名する合同襲名式でございました。
襲名式の中で、「ゆずり道具」という二代から三代へ長年使い込んだ「道具」を譲り渡す儀式を行いましたが、その様子を中国新聞の「天風録」で取り上げて頂きました。
「ろくろ」をキーワードに構成された素晴らしい記事です。
写真はまさに二代興哉から三代興哉へと「柄ごて」を譲り渡している瞬間です。
---以下 中国新聞 天風録より---
英語のtour(旅)の語源はラテン語のtornus(ろくろ)だという。陶芸や木工で使う歴史の古い道具である。なるほど、旅を人生と言い換えてもいい。ぐるり回って少しずつ形を成すから▲ともにろくろを操る2人の若手工芸家が先日、厳島神社で名跡を継いだ。宮島細工挽物(ひきもの)の小林利幸さんは三代目松斎(しょうさい)を、宮島御砂焼の山根宏造(ひろなり)さんは三代目興哉(こうさい)をそれぞれ名乗る。先代から譲り受けた道具を手にして▲小林さんは「丸バチ」という細長いカンナだ。地方によって呼び名が違うのかもしれない。器になる木の内側をくる刃物。亡き父が鍛冶場で鍛える姿を見て育つ。ケヤキの柄には「父の汗がしみついています」▲山根さんが見せてくれたのは「柄ごて」。とくりのような焼き物の、手の届かない内側を形作る。どちらも手仕事の「難所」を乗り切るものといえよう。それを引き継ぐ意味を、ご両人はしかと受け止めたに違いない▲ろくろ、と読む地名は滋賀を中心に全国に分布するという。研究者橋本鉄男さんの著書に教わる。工人たちが山野に材を求め、器に挽(ひ)いて旅した証しか。ご両人もまた、新たな名前で、新たな作風に挑む「旅」を続けるのだろう。